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東京高等裁判所 昭和25年(く)3号 判決 1950年2月11日

被告人

飯塚喜一

主文

原決定を取消す。

被告人飯塚喜一の保釈を許す。

保釈金額は八千円とする。

被告人の住居を東京都葛飾区金町四丁目七十番地に制限する。

理由

弁護人青木彦次郎の抗告申立趣意について。

よつて、所論に鑑みて記録を審査すると、原審が昭和二十四年十二月二十六日被告人飯塚喜一に対し、懲役十月、(但し未決勾留日数二十日算入)の判決を宣告し、同被告人の弁護人より四日附保釈請求書を原審に提出されたところ、原裁判所は、昭和二十五年一月十三日、右保釈の請求は刑事訴訟法第三百四十四条を適用し、同法第六十条、第一項第二号第三号に該当するものと認めて却下しているのであるが、右刑訴法第三百四十四条は、禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、同法第八十九条のいわゆる「権利保釈」の規定を適用しないことを定めたに過ぎないのであり、たとえ、禁錮以上の刑に処する判決の宣告があつても、当該裁判所が諸般の情状を考量して、刑訴第六十条第一項各号の事由に該当しないものと認めたときは、その勾留を取消し、或は保釈金を納付させ、住居制限その他適当と認める条件を附して、保釈を許して差支えないことは、寧ろ当然のことであり、前記刑訴法第三百四十四条はこの保釈をも認めない趣旨のものではないことはいうまでもないところである。従つて本件の事案は、被告人に同法第六十条第一項第二、三号の事由があるか否かの点に帰着するのであるが、この点原判決に認定してある犯罪事実自体に原記録に現われた諸般の事情を加味して考察するときは、勾留の理由が全然消滅したとはいえないまでも、裁判所が相当と認める保釈金を納付させ、住居を制限する方法をとることによつて、被告人が罪証を隠滅したり、逃亡したりする虞は解消できるものと認められ、これと反対の資料は少しも存在しない。

従つて、前記保釈の請求を却下した原決定は失当で、本件抗告は理由があるから、刑事訴訟法第四百二十六条第二項に則つて原決定を取消し、被告人飯塚喜一の保釈を許すべきものとして、主文の通り判決する。

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